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B's-LOG 2013年10月号 『紳士の身支度』

 


「でも、驚いたな……マスターがオレたちをパーティーに招待してくれるなんてさ!」

梓は、鏡の前でまだ着慣れないパーティースーツに身を包み、全身を鏡で確認する。
社会勉強を兼ねて楽しんで欲しいと、マスターに招待されたNPOの親善パーティー……老舗ホテルの控え室で、俺たちは、いそいそと身支度をしていた。

「それにしても、こういう恰好はどうも慣れないな」

俺も身支度をしていると、橘が俺の首元を覗き込んできた。

「しかし、一番大事なのはネクタイやで。JJ、さっきから二つも結び目できてるけど、大丈夫か?」
「いや、これは最終的に一つになる予定で……」


俺は首元で少し複雑な形を作っているネクタイをもてあましていた。
こうしていると昔、密林の虎とゲリラにに居た頃、野営地のテントで使っていたロープワークを思い出す……だが、今はそんな場合ではない。苦笑すると橘が俺の首回りに手を回してきた。


「仕方ないなあJJは……俺がやったるわ……ほら、貸してみ」
「ああ、悪いな」


慣れた手つきで、橘は俺のネクタイをするすると結んでいき、瞬く間に綺麗な結び目が完成した。


「なるほど……やはり、人にやるほうが客観的にできるのか……梓、お前のは俺が結んでやる」
「え……いいよ、自分でできるし……!」
「いいから任せておけ」


俺は嫌がる梓のネクタイを絞めていくが……


「あれ、おかしいな……」


そこには、野営地で鍛えられたロープワークが再現されていた……強度は抜群の筈だが、肝心の見た目は……


「……JJごめん、そろそろ時間だし、自分でやるから」
「……ああ」


俺の紳士への道は、まだまだ遠いのかもしれない。



Fin